たかが趣味、されど…
今までの人生で、多くのものに支えられてきました。もちろん、家族や友人などが最も大きな支えでしたし、これからもそうだと思います。また、私にとっては趣味も人生に彩りを与えてくれるとても大切なものです。趣味を通して多くのことを学び、支えられて来ました。その中でも音楽、とくにバッハは大きな存在です。
音楽は人が生きることと深くつながっています。それは、音楽を深く愛して生きてきた人たちの言葉に端的に表現されています。
「『音楽』『詩』『愛』『死』は同じ根から生えてきた、と思う。」 (故 吉田秀和)
「女房が死んだあと、しばらくして寂しくなって音が欲しくなった時、いろんなものをかけては邪魔になったが、バッハは邪魔しなかったなあ。」 (同上)
「美しい音楽は、沈んでいく夕陽を見た時のような悲しい味がするんです。楽しい曲でも、いい音楽の時はそれがあるみたいなんですよね。不思議なことに」 (小澤征爾)
アメリカの大学院で勉強をしていた頃、テレビでチェリストのヨーヨーマが地下牢の中でチェロを弾いているのを見ました。うめくような孤独な響き。肺腑をえぐられました。後年、それがバッハ無伴奏チェロ組曲第2番であったことを知り、その曲が弾きたくて中年になってチェロを弾き始めました。
バッハとの2度目の邂逅は、ヴァイオリニストの和波たかよし氏の演奏をある会場で聴いた時。その日の最後の演目がバッハのシャコンヌでした。聴いているうちに、言いようのない感情の塊が奥から込み上げてきて、体がシャコンヌの曲に溶かされたような感じでした。化け物のような曲です。
その後かなり経ってから、病院祭などで小さなグループで演奏したことがあります。拙い演奏だったのに、真剣に聴いてくれる人たちがいて、とてもうれしかった。音楽は人と人を繋げる力があることを感じました。これからも、そのような小さな活動を続けたいと思っています。
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